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アライ ケンイチロウ
ARAI Kenichiro
新井 健一郎 所属 社会学部 現代社会学科 職種 准教授 |
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| 言語種別 | 日本語 |
| 発行・発表の年月 | 2026/03 |
| 形態種別 | 大学・研究所等紀要 |
| 標題 | 新興国メガシティの成熟とは?:ジャカルタ研究史の中の『ジャカルタ・アトラス』 |
| 執筆形態 | 単著 |
| 掲載誌名 | 亜細亜大学 現代社会研究 |
| 掲載区分 | 国内 |
| 出版社・発行元 | 亜細亜大学現代社会研究所 |
| 巻・号・頁 | 1(1),15-38頁 |
| 総ページ数 | 24 |
| 概要 | 2025年12月に刊行された『ジャカルタ・アトラス』は、インドネシアの基幹統計の一つ「村落潜在力調査」(PODES)の多様な質問項目内容をGISによって地図化・可視化し、21世紀最初の20年間のジャカルタ都市圏の変貌と域内各地域の特徴の解明を目指した本である。本論文の目的は、この『ジャカルタ・アトラス』の学術的意義を、これまでのジャカルタ研究の文脈上で明らかにすることである。過去にジャカルタを冠した研究は多くされてきたが、データ入手の困難もあり、都市圏全体を対象に、都市化の様相を実証的に明らかにした研究は少ない。
1990年前後に提起されたMcGeeのデサコタ論は、水稲稲作農村地域に立地するアジア都市固有の広域的な都市域の面的な都市化という特徴を理論化したものだった。その理論的視点は21世紀に、京都の総合地球環境学研究所の大規模なメガシティ研究を経て、『ジャカルタ・アトラス』に発展的に継承されている。 『ジャカルタ・アトラス』は地域の生活の多側面にわたるPODESの回答データを地図化した。多数のテーマ別地図とクラスター分析の組み合わせにより、広域的なジャカルタ都市圏、さらにはジャワ島西部全域規模で、21世紀最初の20年間におこった大きな変化を明らかにした。飲料水や生活用水の入手法、調理熱源、排泄の場所、街灯の普及等である。データが示唆するのは、都市生活上の必須ニーズへの対応として、政府による集中的なインフラの整備ではなく、自動車やオートバイによる配送や汚水槽による処理など、極めて分散型の解決がとられていることである。これらの変化は、計画的に開発された居住地と自然集落との差を横断して広域的に進展している。こうした知見は、デサコタ化の特徴を具体的なデータによって実証的かつ生活の多面から明らかにしたものと、評価できる。同書はまた、先行研究では十分に注目されなかった首都圏内地域間の正負の外部効果や、大きな地域間格差や所得格差に対応した多重的で相補的な出産・医療保険サービス・教育サービス等のあり方を、可視化して明らかにした。『ジャカルタ・アトラス』の可視化は問題発見的な価値を持つ多くの成果を提示しており、今後他の新興国メガシティとの比較や、新しいテーマでの事例研究を促すものとして評価できる。 |