アライ ケンイチロウ   ARAI Kenichiro
  新井 健一郎
   所属   都市創造学部 都市創造学科
   職種   准教授
言語種別 日本語
発行・発表の年月 2022/03
形態種別 大学・研究所等紀要
標題 ジャカルタにおける知事公選と住宅 ・ 居住環境整備
執筆形態 単著
掲載誌名 都市創造学研究
掲載区分国内
出版社・発行元 亜細亜大学 都市創造学部
巻・号・頁 (6),17-58頁
総ページ数 81
概要 本論文は、インドネシアの首都ジャカルタを対象に、民主化が中低所得層向けの廉価住宅や既存市街地の居住環境整備に関わる政策にどのような影響を与えたかを研究する。特に、州知事の直接選出が与えた影響に焦点を当てる。 直接選出導入後の五人の州知事下の住宅行政を通時的に検証し、知事の公選が政策に大きな振幅を生み出したことを明らかにする。熾烈な選挙戦により、現職・挑戦者とも、有権者の希望・要求に積極的に応えることで支持を得ようとする姿勢が共通して見られ、それは住宅や住環境整備の分野にも影響した。他方、①公共住宅の量と質の改善、②民間セクターによる廉価集合住宅の供給を刺激しようとする努力、③既存市街地の居住環境改善、④河川敷住民の立退きと再移転を伴う洪水防止策に積極的に取り組むか批判的か、⑤目的達成のため州政府以外の有力な種々のアクター(民間ディベロッパー、政治家、NGO、非公式な地域有力者や大衆団体)のどれに、どの程度依存するか、⑥有権者とのコミュニケーションの経路や様式、といった諸点における優先順位やスタイルには、知事ごとに相当な違いが確認できた。知事選と知事交代がもたらした政策の振幅を通じて、首都の住宅・住環境整備の諸課題中、弁証法的に実質的な改善・前進が達成された側面と、非一貫性と停滞が目立つ側面の両方が確認できた。既存市街地の近隣公園整備と、土地権の点で脆弱な場所に住む住民の政治的交渉力を高めた点では実質的な前進が見られた。公共集合住宅の整備では、政策の非一貫性による遅延や停滞がより目についた。最も政策上の振幅が目立ったのは洪水対策で、また、洪水の脅威から安全な居住環境を実現することにもおおむね失敗した。むしろ10年以上にわたる政策の振幅は、効果的でかつ現実的な洪水対策のオプションがほとんどないという点を際立たせる結果となった。
ISSN 2758-0229
researchmap用URL https://asia-u.repo.nii.ac.jp/records/26608